履歴書、風呂なし、生乾き

永遠の象徴としての「月」 THE BREAKERS『錆びたナイフ』

 

「月が綺麗ですね」なんて女の子に言ったことはあるだろうか。

 

そんなことを言われて喜ぶのは、文学少女かクソサブカル女くらいに思うのだが、間違いだろうか。現代人なのだから「好きって言いなよ!」と思うのだが、素直になれない照れ屋で硬派な男に今でも憧れはあるのだろうか。なんでもいいが、彼女ができたらそんな風にふざけてみたいものである。

 

さてさて、今回はそんな「月」にまつわる小話。

 

古代(主に奈良時代前後)の日本人にとって、月は「永遠」、「不死身」の象徴であったようである。なんでも、月が満ち欠けする様子がまるで、死んではまた復活したように映っていたらしい。「月の雫」を飲んだ者は不死の体を得るとかなんとか。不老不死には興味ないが、一体どんな味かは気になるところ。てか、「月の雫」ってなんだよ。また、月には「桂」が生えているとの伝説があり、その異名として用いられる。ちなみに、この「桂」は、カツラ科カツラ属でいう落葉高木ではなく、秋に花を咲かす「金木犀」のことであるそうな。だから、「月の香り」といえばあの甘い香りのことを指すようだ。中秋の名月なんて言葉もあるように、月は何かと秋に縁深い。

 

普通なら、ここいらで『万葉集』から月の歌でも引っ張ってくるのだが、生憎私は勉強熱心ではないので、自分の引き出しから関連のある作品を紹介しよう。正直、ただこの曲を紹介したかっただけである。

 

↓それがこちら↓


THE BREAKERS- 錆びたナイフ(DEMO)

 

このような、どうあがいても手に入らなそうな貴重な音源を、誰とも存ぜぬが提供して頂けるのは、非常にありがたいと思う。

 

「THE BREAKERS(ザ・ブレイカーズ)」というのは、ギタリスト・真島昌利マーシー)が「THE BLUE HEARTSブルーハーツ)」の結成前にボーカルをとっていたバンドである。一番有名なのは、ジャニーズの近藤真彦に楽曲提供された「アンダルシアに憧れて」だろう。その他にも、マーシー作曲のものはブルーハーツマーシー自身のソロ楽曲にリメイクされていて、知っている人もいるだろう。見慣れたバンダナではなく、スーツにリーゼントのマーシーが見れるのはこの頃の映像だけだ。

 

「薔薇や月の光に手を伸ばして 永遠にいつまでもそんな風に...」

 

「錆びたナイフ」の楽曲について先の話に絡めて言えば、「月の光に手を伸ば」すということはつまり「永遠を求める」ということだろう。「薔薇は?」と言われれば、黒い薔薇の花言葉に「永遠の愛」がある。マーシーの中で、「月=永遠」という古代日本人的感覚が二十歳前後であったことから、彼の詩人としての器量をうかがえる。最も、彼は文学に対し造詣が深く、中原中也に至ってはTシャツにプリントして着るほど愛好している節もあり、数多の文学者から脈々と受け継がれた端であると考えるのが妥当だろう。

 

「自由と不自由の中で 全てに唾を吐きかけながら」、躍起になっていた少年のこころをいつまでも忘れないように、月にその永遠を願う。そんな歌だろう。

 

絶賛梅雨入り状態でなかなか拝めないだろうが、月の夜には是非思い出してみてほしい。

 

 

 

塩野